インコの日記

さえずり、ドラミングなど

今日の献立:鶏のキモ炒め(失敗)

ここ最近自炊をしている。飽き性なので自炊の頻度には波があるのだが、ここ2週間ほどは用事がない限りは専ら手料理だ。

自炊をするということは、今日の献立を何にするかという料理をする者に常にある悩みと日々向き合うことにもなる。

自分は何かを前もって考えておくことができない人間なので、大体ノープランでスーパーに入ってはカゴを持ったまま店内を行ったり来たりして安売りの肉や野菜を物色しながらあーでもないこーでもないとうんうんうなり、20分ほど店内をさまよってようやく献立と食材を決める。そんな買い物を毎回しており、今日もそんな塩梅だった。

 

「スーパーで加工された肉が簡単に手に入るようになってから現代人は命のありがたみを理解しづらくなった」

そんな文章を中学受験の時に死ぬほど読まされたなぁと思いながら、精肉コーナーをさまよっていたところ、ふと割引シールがでかでかと張られているトレーを見つけた。鶏むね肉の棚にひっそりと隠れていたその肉は今まで一度も買ったことのない鶏の「キモ」だった。自分がよく行くスーパーは肉の品質がとにかく悪くドリップまみれのものしか置いていないため内臓なんて普段なら絶対に買わないのだが、冒頭に書いたようにガキの頃の説教臭い文章を思い出していたせいで謎の反骨心がムラムラと沸き上がった。そしてわずかな逡巡を経て割引のキモを今晩の食材とすることにした。

 

家に帰ってさっそく調理を開始したが、案の定臭い。トレーがドリップまみれだったためある程度覚悟はしていたが、本当に臭い。ザルにあげて水で流したところ、肉の間から赤黒い塊がぽろぽろ出てくる。正体は血管内に残っていた血の塊で、これが臭いの原因のようだ。ザルからボウルに移しマッサージの要領で扱くと血管の切り口から血の塊が出るわ出るわ。それでも取り切れなかったのでハツに包丁を入れて心室に溜まっている塊を指でこそぎ落とし、最終的には納豆の小さなパック一つ分ぐらい血の塊を取った。

 

キモとの格闘に20分、本調理に20分かけ、それまでの買い物も含めると90分近くの時間を要して本日の夕餉ができた。これだけ丁寧に準備をしたのだからさぞ美味しいのだろうと思ったが、期待を想像以上に下回る不味さだった。丁寧にした処理をしたかいあって血からくる悪臭こそしなかったが、肉自体が劣化していたのか、ゴムと砂利とサルミアッキを足して3で割ったような味がした。

努力は必ずしも実を結ばないという、苦い味を噛みしめながら、大量に作ってしまった不味いキモ炒めを一人で黙々と処理した。二度と作らない。

せめて栄養価ぐらいは高くあってほしかったがあすけんの点数はボロボロだった。